ぶどう栽培の中でも、「摘粒(てきりゅう)」は特に迷いやすい作業ではないでしょうか。
「どこまで粒を減らせばいいのか分からない」
「もったいなくて切れない」
「やりすぎてしまいそうで不安」
そんな悩みを感じる方も多いと思います。
摘粒は、ぶどうの大きさや形、品質を左右する大切な作業です。
ただし、ポイントを押さえれば、家庭菜園でも十分に行うことができます。
この記事では、ぶどう農家の実体験をもとに、摘粒のやり方やタイミング、残す粒の目安について分かりやすく解説します。
ぶどうの摘粒とは?
ぶどうの摘粒とは、房についている粒の数を減らし、形や大きさを整える作業のことです。
そのままにしておくと、粒が多すぎて一つひとつに十分な養分が行き渡らず、小粒でばらつきのある房になってしまいます。
摘粒を行うことで、粒の数を適切に調整し、見た目の整った房に仕上げることができます。
また、粒同士の間隔をあけることで粒が潰れるのを防げます。さらに風通しが良くなることで、病気の予防にもつながります。
ぶどう栽培においては、品質を大きく左右する重要な作業のひとつです。
摘粒をする理由
摘粒は、ぶどうの見た目を整えるだけでなく、品質を高めるために欠かせない作業です。
主な理由は次の3つです。
粒を大きく育てるため
ぶどうの粒は、養分を取り合いながら成長します。
粒の数が多すぎると、一つひとつに十分な養分が行き渡らず、小さくてばらつきのある仕上がりになってしまいます。
摘粒を行い、粒の数を適切に減らすことで、残した粒に養分が集中し、大きく育ちやすくなります。
房の形を整えるため
ぶどうは粒の配置によって見た目の印象が大きく変わります。
粒が密集しすぎていると形が崩れたり、詰まりすぎて見た目が悪くなることもあります。
また、粒同士が押し合ってしまうことで、成長の過程で粒が潰れてしまうこともあります。
摘粒によってバランスよく粒を残すことで、見た目の整った房に仕上げることができます。
病気を防ぐため
粒同士が密着しすぎると風通しが悪くなり、湿気がこもりやすくなります。
その結果、病気が発生しやすくなる原因にもなります。
摘粒によって適度な間隔をあけることで、風通しが良くなり、病気のリスクを下げることができます。
摘粒のタイミング
摘粒のタイミングは、ぶどうの仕上がりを大きく左右する重要なポイントです。
早すぎても遅すぎても良くないため、適切な時期を見極めることが大切です。
満開から10〜20日後が目安
摘粒のタイミングは、一般的に「開花して満開になってから10〜20日後」が目安とされています。だいたい、ジベレリン処理のの2回目をした後くらいです。
この頃になると、粒がある程度の大きさになり、形も見えてくるため、どの粒を残すか判断しやすくなります。
粒の大きさで判断する
日数だけでなく、粒の大きさも重要な判断基準です。
目安としては、小さな粒から少し膨らみ(あずき豆より少し大きいくらい)、形がはっきりしてくるタイミングが適しています。
この段階であれば、粒の良し悪しや配置が分かりやすく、バランスよく摘粒することができます。
遅すぎると作業が難しくなる
摘粒が遅くなると、粒同士が密着してきて作業がしづらくなります。
無理に粒を取ろうとすると、周りの粒を傷つけてしまうこともあります。
また、すでに養分が分散された状態になっているため、摘粒の効果も薄れてしまいます。
早すぎても判断が難しい
反対に、早すぎるタイミングで摘粒を行うと、粒がまだ小さく、どれを残すべきか判断しづらくなります。
種ありでも種無しでも、不受精の粒が残ることがあり、この粒はどう頑張っても大きくなることはないです。早い段階での摘粒では見極めがとても難しいです。
結果として、必要以上に取りすぎてしまったり、バランスの悪い房になることもあります。
摘粒のやり方(どこを取るか)
摘粒は、ただ粒を減らせばいいというものではなく、房全体のバランスを見ながら行うことが大切です。
ここでは、基本的なやり方とポイントを紹介します。
房の形をイメージする
摘粒を始める前に、どんな形の房に仕上げるかをイメージすることが重要です。
一般的には、縦に長く、先に向かってやや細くなるような逆三角形を意識すると、バランスの良い房になります。
最初に全体のイメージを持っておくことで、どの粒を残すか判断しやすくなります。
不受精の粒や形の悪い粒を取り除く
まずは、明らかに小さい粒や形の悪い粒から取り除いていきます。
先程も書いたように不受精の粒は大きくならないため取り除きます。それに加えて、形の悪い粒も全体の見た目が悪くなるので取り除いてしまいましょう。
密集している部分を間引く
粒が密集している部分は、重点的に間引いていきます。
粒同士の間隔を適度にあけることで、風通しが良くなり、粒の成長もしやすくなります。
また、粒同士が押し合って潰れるのを防ぐことにもつながります。
残す粒の目安
最終的には、粒同士が軽く触れない程度の間隔を保つのが目安です。
詰まりすぎず、スカスカにもなりすぎない、ちょうど良いバランスを意識します。
最初は難しく感じるかもしれませんが、何房かやっていくうちに感覚がつかめてきます。
巨峰やシャインマスカットのような大粒種のぶどうで、400〜500gの房を作ろうと思った時に残す粒の量は、約40粒ほどを意識するといいです。
農家がパートさんに教える際の摘粒のコツ
農家の現場では、摘粒作業をパートの方にお願いすることも多くあります。
そのため、誰が作業しても一定の仕上がりになるように、分かりやすい基準を伝えることが大切です。
ここでは、実際に現場で伝えている摘粒のコツを紹介します。
最初に「完成形」を共有する
摘粒を始める前に、どのような房に仕上げるかをイメージで共有します。
言葉だけで説明するのではなく、実際の房を見せながら「これくらいの形にする」と伝えることで、作業の精度が大きく変わります。
迷ったら残す基準にする
摘粒では、「残すかどうか迷う粒」が必ず出てきます。
現場では「迷ったら残す」という基準を伝えることが多いです。
1度切ってしまった粒は戻せないので、1度残しておいて再度見直しをした時に、詰まりそうだったら取ることを意識しています。
外側と内側のバランスを見る
粒を減らす際は、房の外側だけでなく内側にも注意します。
外側ばかり整えてしまうと、内側が詰まってしまい、見た目や通気性が悪くなることがあります。
ぶどうは軸から何個か粒が出ており、これを車(くるま)と呼びます。この車のうち内側に入ってしまいそうな粒を取り除き、全体を見ながらバランスよく摘粒することがポイントです。
スピードよりも正確さを優先する
慣れてくると作業スピードが上がってきますが、最初のうちはスピードよりも仕上がりを重視することが大切です。
丁寧に作業することで、結果的に品質の安定につながります。
摘粒でよくある悩み
摘粒はシンプルな作業に見えて、実際にやってみると悩むポイントが多い作業でもあります。
ここでは、よくある悩みとその考え方を紹介します。
どこまで取ればいいのか分からない
摘粒で一番多い悩みが、「どこまで減らせばいいのか分からない」というものです。
粒を取りすぎても良くないのではと不安になり、つい残しすぎてしまうこともあります。
そんなときは、「少し余裕があるくらい」を目安にするとバランスが取りやすくなります。
詰まりすぎている状態よりも、やや間隔が空いている方が結果的に良い房に仕上がります。
もったいなくて切れない
粒を減らす作業は、どうしても「もったいない」と感じてしまうことがあります。
しかし、すべての粒を残してしまうと、一つひとつが十分に大きくならず、全体の品質が下がってしまいます。
量より質を意識して、必要な分だけ残すことが大切です。
やりすぎてしまうのが怖い
反対に、「取りすぎてしまうのではないか」と不安になることもあります。
最初は不安でも、何房か作業していくうちに感覚がつかめてきます。
最初から完璧を目指す必要はなく、少しずつ慣れていくことが大切です。
まとめ
ぶどうの摘粒は、粒の大きさや房の形、品質を大きく左右する重要な作業です。
最初は難しく感じるかもしれませんが、ポイントを押さえれば家庭菜園でも十分に取り組むことができます。
今回の内容をまとめると、
・摘粒は粒の数を減らし、養分を集中させる作業
・タイミングは満開後10〜20日が目安
・粒同士の間隔をあけ、バランスよく整えることが大切
また、完璧を目指す必要はなく、まずは「詰まりすぎないようにする」ことを意識するだけでも仕上がりは大きく変わります。
摘粒は経験を重ねることで感覚がつかめてくる作業です。
今回の記事が、ぶどう栽培に取り組む方の参考になれば嬉しいです。
ぶどう栽培の流れについては、こちらの記事でも詳しく解説しています。

