新規就農の方法まとめ:未経験から農家になるためのロードマップ

新規就農

農業を始めたいけれど、どこから手をつけていいかわからない――。そんな方に向けて、新規就農までの流れを、できるだけ分かりやすく、実践的にまとめました。

  1. はじめに
  2. 1. まず最初に考えるべきこと
  3. 2. 就農の3つのパターン
    1. ① 農家に弟子入り(研修)して独立
    2. ② 農業法人に就職し、その後独立
    3. ③ 農地・資金を自分で確保していきなり就農
  4. 3. 研修先の探し方
    1. ①自治体の就農窓口を活用する
    2. ②都道府県の農業普及指導センターや就農支援センターに相談する
    3. ③農業大学校・農業研修センターの研修制度を利用する
    4. ④SNS・ブログ・YouTubeを使って「学びたい農家」を探す
    5. ⑤気になる農家に直接訪問して話を聞く
    6. ⑥研修先選びで絶対に失敗しないためのコツ
  5. 4. 農業を始めるために必要な資金
    1. ①新規就農者の平均的な初期費用の目安
    2. ②初期費用の主な内訳
    3. ③作目別の実際の必要金額
    4. ④見落としがちな隠れコスト
    5. ⑤補助金を活用することで実質負担は減らせる
  6. 5. 使える補助金・支援制度
    1. ① 就農前の支援(研修段階)
    2. ② 就農開始時の支援(独立タイミング)
    3. ③ 機械・施設導入の補助
    4. ④ 融資(制度資金)
  7. 6. 農地の探し方
    1. ① 農業委員会を活用する
    2. ② 農地中間管理機構(農地バンク)に登録する
    3. ③ 研修先や地域農家からの紹介
    4. ④ 地域の自治会・集落に入り情報収集する
    5. ⑤ 実際に歩いて現地を見てみる
    6. ⑥ 借りる前に必ずチェックすべきポイント
  8. 7. 就農する地域の選び方
    1. ①その地域が「作りたい作物」に適しているか
    2. ②土地の条件(農地の質)
    3. ③農地が確保しやすい地域かどうか
    4. ④生活環境(定住のしやすさ)
    5. ⑤コミュニティとの相性
    6. ⑥移住支援・就農支援制度の有無
    7. ⑦最終的な判断は「体験してみること」
  9. 8. 就農までのスケジュール感(目安)
    1. ①1年目:情報収集・地域探索・研修先探し
    2. ②2〜3年目:本格的な研修期間(技術習得)
    3. ③3〜4年目:資金計画・農地確保・設備準備
    4. ④4年目:いよいよ就農・独立スタート
  10. ⒐僕がぶどう農家として独立するまでの流れ
    1. ①進学と専門知識の習得
    2. ②研修先での経験
    3. ③独立に向けた準備期間
    4. ④独立し、ぶどう農家としてスタート

はじめに

僕はいま、ぶどうを中心に畑仕事をしながら、野菜づくりにも挑戦している農家として生活しています。自然と関わりながら働くこと、そして自分の手で育てた作物で人に喜んでもらうことに、大きなやりがいを感じています。

そんな僕が農業を志した最初の理由は、昔から植物を育てることが好きだったこと。そして高校卒業後、おじに連れられて訪れた“農業をしながらカフェを経営している農家さん”との出会いでした。自分の畑で採れた野菜や果物を使ってカフェを運営し、地域の人が集まる居場所をつくっているその姿に強く憧れ、「いつか自分もこういう生き方がしたい」と感じたことが原点です。

1. まず最初に考えるべきこと

新規就農で最初に必要なのは「どんな農業をしたいか」という方向性を決めることです。
• 何を作りたいか(野菜、果樹、畜産、花きなど)
• どんな規模でやりたいか
• 最終的にどんな働き方をしたいか

方向性が固まると、次に必要な資金や研修先、地域選びがスムーズになります。
そして、何を作りたいかの方向性が決まってない状態で農協や役場に相談をしに行っても、相手にされないことが多いです。なので、栽培したい品目を最低限決めておきましょう。

2. 就農の3つのパターン

就農を目指すとき、最初に迷うのが“どの働き方・学び方を選ぶか”という点です。
独立を目指す以上、技術だけでなく経営感覚や販路づくりなど、身につけておくべきことが多くあります。そのため、自分に合ったルートを選ぶことがとても重要になります。

新規就農には、大きく分けて次の3つのルートがあります。それぞれにメリット、デメリットがあるのでそれについてお話していきます。

① 農家に弟子入り(研修)して独立

1つ目は農家に弟子入りをして独立です。
1番多いパターンはこれだと思います。
僕の研修先の農家さんにも、研修に来たいという方が何人か来たことがありました。

【メリット】

1. 独立に必要な“リアルな技術”が学べる

個人農家は、すべての作業を少人数で回しているため、栽培管理から販売までの全ての工程が見えます。なので、独立後にそのまま活かせるスキルが身につきやすい。

2. 経営の意思決定が間近で見られる

「なぜ肥料をこうするのか」「今年の作付けはどうするのか」など、経営者の思考がそのまま学べるのが大きいので、自分の農園を持つイメージが湧きやすい。

3. 農地の紹介・地域のつながりが作りやすい

弟子入りした農家さんが土地を紹介してくれるケースも多い。地域の農家さんにも自然に顔が広がります。新規就農で一番大変な”農地探し”や“地域ネットワーク”を得やすい。

【デメリット】

1. 給料が少ないことが多い

農家によるが、一般のアルバイトより低い傾向。
独立までに経営資金はある程度貯めておきたいので給料が低いのはかなりのデメリットです。

2. 研修内容が農家のスタイルに依存する

師匠のやり方がすべて。
作物の種類も基本的に同じになる。
学べる幅は“その農家さん次第”。

② 農業法人に就職し、その後独立

2つ目は農業法人への就職です。
給料をもらいながらスキルを身につけられるため、資金面の不安が少ないルート。
就職 → 数年勤務 → 独立の流れになります。

【メリット】

1. 給料が安定している

社会保険があるケースが多く、給与も安定。
生活の安定感は圧倒的に上。独立までに必要な資金も比較的貯めやすいと思います。

2. 作業体系が整っているため基礎が身につきやすい

マニュアルがあり、新人教育や作業分担がある。
農業未経験からでも入りやすい。

3. 機械作業や大規模栽培の技術が学べる

法人は規模が大きいことが多いので、
大型機械の運転や、効率の良い作業体系が学べる。

【デメリット】

1. 経営の細部までは見えにくい

法人だと経営者と距離があるため、
「独立のための細かい判断基準」を学びにくい。

2. 独立向けに作業が最適化されていない場合がある

法人は規模が違いすぎて独立時に活かしづらいことも。
• 大型ハウスありきの栽培
• 人手が多い作業設計
• 資材の使い方が個人経営と違う

3. 農地の紹介や独立支援は弱いことが多い

法人から独立する場合、地域とのつながりが薄くなりがち。

③ 農地・資金を自分で確保していきなり就農

新規の場合はハードルがすごく高いですが、制度を使えば可能です。

【メリット】

① 自分の理想の農業をすぐに始められる

師匠のやり方に縛られないため、最初から
• 作りたい作物
• 栽培方法
• 規模
• 営業スタイル
すべてを自分で決められます。

**「最初から自分の農園を作りたい」**というタイプには大きなメリット。

② 若くても自分のブランド作り・販売導線を最速で作れる

研修期間がないため、
SNS・ネットショップ・直売所などの発信や販売戦略も早く始められます。

③ 農地や設備の条件を自分で選べる

研修先の地域に縛られないので、
• より良い立地
• 気候
• 土壌
• 水利
などを自分で選べる。

好きな地域に移住して農業を始めたい人には強み。

④ 実家が農家の場合は最も相性が良い

既に家族に技術があり、農地・設備も揃っている場合、このルートは最速でスタートできます。

【デメリット】

① 栽培技術が不十分なままスタートするリスク

研修で学ぶ技術(病害虫防除、肥培管理、収穫調整etc)がないまま、いきなり本番。
経験不足のまま始めると、
• 収量が安定しない
• 品質のばらつきが出る
• 病気を出しやすい
など、作物の出来に大きく影響します。

特に果樹は“初期の管理ミスが数年後まで影響”するので要注意。

② 経営の失敗リスクが高い

農業は
• 投資額が大きく
• 回収が遅く
• 気候リスクも大きい
というビジネス。

研修なしで始めると、
• 適切な設備投資の判断
• 資材の選び方
• 販売方法
• コスト管理
などが分からないまま進むため、資金が尽きやすくなります。

③ 農地探しが非常にむずかしい

地域に縁がないと、
農業委員会でも「実績なしだと貸しにくい」と断られることが多い。
研修先の“人脈による紹介”が使えないため、
農地確保に最も時間がかかるルートでもあります。

④ 相談できる先輩農家がいない

独立直後は、小さな疑問でも命取りになることがあります。
研修先や師匠がいない場合、
その都度すべて自分で判断することに。

精神的な孤独・不安が大きいのも特徴。

⑤ 補助金のハードルが上がることがある

「農業次世代人材投資資金(準備型)」などは、
研修を前提にした制度も多いため、
いきなり就農では使えないケースがあります。
資金面で他ルートより不利になりやすい。

それぞれメリット、デメリットについて書きましたが、これでなきゃいけないというものではないので自分に合ったルート選びをしていただけたらと思います。

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3. 研修先の探し方

新規就農を目指すうえで、多くの人が最初につまずくポイントは「どこで農業を学べばいいのか?」という部分です。特に独立を目指す場合、研修先の選び方は今後の農家人生を左右するといっても過言ではありません。なぜなら、農業は本やネットだけでは身につかない“感覚”や“判断力”が必要となり、それは現場で経験を積むことでしか得られないからです。

ここからは、具体的な研修先の探し方と、失敗しないためのポイントを詳しく紹介します。

①自治体の就農窓口を活用する

まず最初に行くべきは、就農を希望する地域の 市町村役場の農政課や農業委員会 です。多くの自治体では、就農希望者向けの窓口を設けており、研修制度や受け入れ農家、地域の農業の特徴などを教えてくれます。

自治体の窓口を訪れるメリットは以下の通りです。
• 受け入れ実績のある農家を紹介してくれる
• 研修生に対する助成金や補助制度を説明してくれる
• その地域の農業の現状(作物、気候、経営者の年齢層など)を教えてくれる
• 農地確保の見通しが立つかどうかを判断してくれる

特に、就農予定の地域が決まっている場合は、最速で情報が得られるルート といえます。

②都道府県の農業普及指導センターや就農支援センターに相談する

各都道府県には「農業普及指導センター」や「就農支援センター」といった、より専門的な相談窓口があります。ここでは、技術面や経営面の相談もできるため、本格的に農業に取り組みたい人におすすめです。

ここで相談するメリットは、
• 作物ごとの専門的な研修先を紹介してもらえる
• 経営開始後のサポートが受けられる
• 認定新規就農者制度や資金計画についての支援が受けられる

果樹や施設園芸など、技術の習得に時間がかかる作物を選ぶ場合、このルートは特に有効です。

③農業大学校・農業研修センターの研修制度を利用する

本格的に技術を学びたい人には、1〜2年の研修が受けられる 農業大学校や農業研修センター が選択肢となります。

ここで学ぶメリットは、
• 座学と実習のバランスが良く、基礎を体系的に学べる
• 一緒に学ぶ仲間ができる
• 就農支援制度の説明が手厚い
• 実習先(農家・法人)の紹介がある

特に農業初心者の場合、いきなり農家へ弟子入りするより、基本を学んだうえで研修先へ行った方がスムーズに技術が身につきます。

④SNS・ブログ・YouTubeを使って「学びたい農家」を探す

近年では、多くの農家がSNSで情報発信をしており、そこから研修生募集につながるケースも増えています。

SNSを使うメリット
• 実際の現場の様子がリアルタイムでわかる
• 農家の人柄・考え方を事前に知れる
• DMで直接問い合わせができる
・自分の理想の働き方に近い農家を探せる

特に、ブログやSNSを活用している農家さんとマッチすると、発信の仕方まで学べるのが大きなメリットです。

⑤気になる農家に直接訪問して話を聞く

研修先を決めるうえで最も大切なのが、実際に行ってみること です。これをしないとミスマッチが起きる確率が高くなります。

訪問するときにチェックすべきポイントは以下の通りです。

【確認ポイント】
• その農家がどんな経営方針で動いているか
• 栽培方法は自分に合うか(慣行、減農薬、有機など)
・ 一日の作業の流れ
• 研修生への接し方・教え方
• 独立後の支援があるか(農地紹介、技術サポートなど)
• 家族経営か、従業員がいるのか
• 収益性はどうか(規模・設備投資・販売方法)
• 労働環境(休みの頻度、体力の負荷)

農家の雰囲気や価値観が自分に合うかは、非常に重要なポイントです。

⑥研修先選びで絶対に失敗しないためのコツ

①「作物」ではなく「人」で選ぶ

同じ作物でも、農家によって技術も経営も全く違います。
作物よりも その農家さんの考え方・相性 を優先した方がうまくいきます。

② 独立後のサポート体制を重視する

• 農地の紹介
• 機械・設備の貸し出し
• 技術的な相談
これらがある研修先は非常に心強いです。

③ 必ず複数の研修先を比較する

1つだけ見て決めるのは危険です。
最低3件は訪問し比較しましょう。

④ 「実際に働いてみる」短期体験をする

1週間〜1ヶ月の短期研修は非常に有効。
アルバイトでもいいので1度働いてみるといいです。長期研修のミスマッチ防止になります。

農業は孤独になりやすい仕事で、独立当初は「これで合っているのか?」と迷う場面が多いです。技術を教えてくれるだけでなく、独立後のフォローが期待できる研修先は、その後の成長スピードが全く違います。

研修先選びは、就農への最初の大きな分岐点です。
• 自治体
• 支援センター
• 農業大学校
• SNS
• 農家訪問
• 比較・体験

これらを組み合わせ、「自分がどんな農家になりたいか」に最も合う場所を選ぶことが、独立成功への近道です。

研修先選びにじっくり時間をかけることは、結果的に就農後の失敗を大きく減らし、あなたの農業人生を豊かにします。

4. 農業を始めるために必要な資金

農業を始めるうえで最初の大きな壁となるのが「初期費用」。新規就農者の多くが悩むポイントですが、実際に必要な金額は作物や規模、設備の有無によって大きく変わります。ここでは、最新のデータを踏まえながら、作目別の費用の目安と内訳、そして見落としやすいポイントについて詳しく解説します。

①新規就農者の平均的な初期費用の目安

新規就農者が準備する平均自己資金は以下の通りです。
• 営農費用:平均291万円
• 生活費:平均180万円
合計:約471万円(土地取得を含まない)

また、就農1年目に必要となる費用の平均は次のとおりです。
• 露地野菜:431万円
• 施設野菜:1,136万円
• 果樹:419万円

ただし、果樹は苗木定植から収穫まで数年かかるため、初年度の数字だけで判断してはいけません。収益化までの生活費・運転資金も必要になります。

②初期費用の主な内訳

農業を始めるのに必要な資金は大きく5つに分けられます。

① 農地取得・整備費

農地は借りる場合が多いため「地代は安い」ことが多いですが、放棄地などを借りる場合は次のような整備費が発生します。
• 耕起・伐採・整地:数万円〜
• 土壌改良(堆肥、石灰など):数万円〜

② 作物導入費(苗木・種・資材)
• 野菜:種・苗・マルチ・肥料など → 数万円〜数十万円
• 果樹:苗木1本3,000円〜、植栽本数によって大きく変動
• ぶどう棚:1反あたり約100万円〜

果樹は植えてもすぐ収入が出ないため、導入費だけでなく“時間コスト”も大きい点に注意が必要です。

③ 設備費(農機具・ハウス・機械・中古を含む)
• トラクター:数十万〜
• マルチャー:数万〜
• 防除機械:数万〜
• 倉庫・作業場整備:数十〜数百万円
• ハウス(必要な場合):150〜300万円以上

果樹はハウスが不要な場合が多いですが、棚・支柱・ワイヤー類の設備費が高いのが特徴です。

④ 農業資材・消耗品
• 肥料・農薬:年間数万円〜数十万円
• 防草シート・テープナー消耗品:数万円〜
• 機械類の維持費・燃料費:数万円〜

これらは小さな出費に見えますが、年間合計で大きな額になります。

⑤ 生活費+収穫までの運転資金
果樹は特にここが重要です。
• 生活費:150〜250万円/年
• 果樹の場合:収益化まで2〜5年
➡️ 生活費300〜600万円分の蓄えがあると安心

この部分を見落とすと、途中で資金が尽きて離農してしまう原因になります。

③作目別の実際の必要金額

最新データを基にした作目別の目安は以下の通りです。

【露地野菜】:300〜800万円
設備が最小限で済むため、新規就農の中では比較的ハードルが低い。

【果樹(ぶどうなど)】:500〜1,500万円
• 棚設備
• 苗木・資材
• 園地整備
• 防除機械
などで費用が増えやすい。さらに収益化までの生活費が必須。

【施設園芸】:1,000〜3,000万円以上
ハウス・暖房機・潅水設備など、高額になりやすい。

④見落としがちな隠れコスト

新規就農者が特に把握しておくべき支出。
• 車両費・保険
• 倉庫・機械置き場の確保
• 霜・台風対策
• 電気・燃料代(施設栽培は特に高い)

これらを予算に含めないと、必ず資金ショートが起こります。

⑤補助金を活用することで実質負担は減らせる

代表的な制度は以下の2つ。

● 農業次世代人材投資資金
• 研修中(準備型):年間最大150万円
• 就農後(経営開始型):年間最大150万円(最長3年)

● 各種施設整備補助
• ハウス設置
• 防除機械
• 農業機械

条件が合えば実質半額で設備を導入できる場合もあります。
農林水産省のホームページや各市町村で新しい補助金の情報などが更新されている事もあるので常にチェックをしておくと農業経営を続けていく上でも役にたちます。

5. 使える補助金・支援制度

新規就農向けの補助金や支援制度は、毎年内容が見直されたり、新しく追加されたり、逆になくなったりと動きが早いのが特徴です。そのため、詳細を覚えるよりも「どんな種類の支援があるのか」を大まかに押さえ、最新情報は必ず自治体や就農支援センターで確認することが大切です。

ここでは、代表的な支援制度を紹介します。

① 就農前の支援(研修段階)

就農準備中に利用できる制度として有名なのが、国が行っている研修生向けの支援です。一定の条件を満たすと、研修中の生活費として研修先に補助金が支給され、そこから研修費や給料が支払われるものです。これにより、研修に集中しながら技術を身につけることが可能になります。ただし、年齢や研修内容、計画書の提出など細かな条件があるため、必ず最新の基準を確認しましょう。

② 就農開始時の支援(独立タイミング)

独立して営農をスタートするときにも、生活費支援や設備投資に使える資金が用意されている場合があります。特に就農直後は収入が安定しにくいため、生活費を一定期間補助してくれる制度は大きな助けになります。こちらも年度ごとに支給額や要件が変わることがあるため、早めの情報収集が重要です。

③ 機械・施設導入の補助

地方自治体では、ハウスの建設や機械の導入、農地の整備などに対する補助金を独自に用意している場合があります。対象となる作物や地域、補助割合などは自治体ごとに大きく異なります。果樹やぶどう専用の補助を用意している地域もあるため、自分が就農したい地域の制度を優先的に調べると効率的です。

④ 融資(制度資金)

日本政策金融公庫や自治体の制度資金など、低金利で借りられる融資制度も新規就農者の強い味方です。補助金と違い返済は必要ですが、長期で無理なく返済できる仕組みになっているものも多く、「初期費用の不足分を補う」目的で利用されることが多いです。

補助金はあくまで“使えるとラッキー”くらいの気持ちで、最終的には自分の計画と資金計画がしっかりしていることが重要です。制度はどんどん変わるため、最新の情報は必ず自治体や支援センターで確認しておきましょう。

6. 農地の探し方

農地探しは、新規就農の中でも最も苦戦しやすいステップです。特に、土地は人と人との信頼関係によって動く側面が強く、「探せばすぐ見つかる」というものではありません。しかし、正しい方法で動けば必ず道は開けます。ここでは、農地を見つけるための具体的な探し方を解説します。

① 農業委員会を活用する

農地探しの最初の窓口は、就農地域の「農業委員会」です。農地の売買・賃貸は農地法に基づいて審査が必要なため、ここを通さずに農地を借りることはできません。農業委員会では、地域の空き農地情報や、貸し手を探している農家の情報を持っています。また、新規就農者への支援にも積極的で、農地紹介や書類作成のアドバイスなど幅広くサポートしてくれます。

② 農地中間管理機構(農地バンク)に登録する

各都道府県にある「農地中間管理機構(通称:農地バンク)」は、農地の貸し手と借り手をつなぐ公的な機関です。大規模農家への集約化が目的の一つですが、新規就農者にも貸し出しが行われています。メリットは、
• 安心して借りられる(手続きが明確)
• 長期で借りられることが多い
• 畑の整備が入る場合もある
という点です。ただし、人気地域は競争が激しいため、早めに相談しておくことが大切です。

③ 研修先や地域農家からの紹介

実際に最も農地が見つかりやすいのは、“人からの紹介”です。研修を受けて信頼を積み重ねていくと、「うちの畑を使わないか?」「近所で貸したい人がいる」と声を掛けてもらえることがあります。地域に馴染むことは、新規就農にとって非常に大きなメリット。日頃の挨拶やコミュニケーションも、農地確保につながる大切な行動です。

④ 地域の自治会・集落に入り情報収集する

農地の貸し手は高齢者であることが多く、ネットに情報を出さないケースがほとんどです。そのため、自治会の行事や地域の集まりに参加して顔を覚えてもらうと、情報が自然と流れてきます。農家同士の口コミこそが、農地探しの最大の情報源。地域に溶け込みながら探すのは最も効果的な方法です。

⑤ 実際に歩いて現地を見てみる

「このエリアで農地がほしい」という地域が決まっているなら、実際に歩いて畑の状態を観察してみるのも有効です。草が生い茂っている畑や、数年使われていなさそうな土地は、放棄地の可能性があります。自治会や農業委員会に問い合わせれば持ち主を教えてもらえることもあるため、自分で候補地を見つける行動は十分効果があります。

⑥ 借りる前に必ずチェックすべきポイント

農地は場所によって条件が大きく変わるため、以下のチェックは必須です。
• 風の強さ・日当たり・冷気の溜まりやすさ
• 水利(用水路の有無)
• 土質(重い土か軽い土か)
• 周辺環境(獣害・農薬ドリフト)
• 排水性の良さ
果樹(特にぶどう)は水はけの悪い土地だと根腐れのリスクが高まるため、排水条件は最重要ポイントになります。

農地はタイミングが命です。良い土地はすぐに埋まってしまうため、条件が合う土地を見つけたら迅速に動くことが必要です。また、果樹は植えてから収穫まで年数がかかるため、早く農地を確保して植え始めるほど、将来の収量に直結します。

農地探しは「情報の量」と「人間関係」、そして「判断力」の3つが鍵になります。焦らず、しかし積極的に動くことで、必ず自分に合った土地と巡り合うことができます。

7. 就農する地域の選び方

 就農では、「どんな作物を作るか」と同じくらい “どこで農業をするか” が大きな決断になります。地域選びを間違えると、気候・農地条件・人間関係・生活環境など、あらゆる部分で苦労しやすくなります。逆に、自分に合った地域を選べれば、農業は圧倒的に続けやすく、成功しやすくなります。

ここでは、就農地域を選ぶ際に必ず確認しておくべきポイントを、深掘りして解説します。

①その地域が「作りたい作物」に適しているか

地域選びの最重要ポイントは 気候や地形が作物に合っているか です。

● 気温・気候
• 果樹(ぶどう・桃・柿など)は気温・降雨量の影響が大きい
• 露地野菜なら標高や霜の頻度も確認
• 台風が多い地域かどうか

● 年間の日照量
日照は品質・糖度に影響しやすく、特にぶどうは日照が多いほど有利です。

● 降水量・湿度
湿度が高い地域は病気が出やすく、管理に手間がかかります。

● 地形(南向き斜面・丘陵地など)
果樹は“南向き斜面”が最高条件で、冷気が溜まりにくく日当たりが良いです。
→ 作物の適性と地域の特徴が合っているかを最優先でチェックしましょう。

②土地の条件(農地の質)

良い土地かどうかも農業の成果を大きく左右します。

● 土質(粘土質・砂質・壌土)
・ぶどうは水はけの良い「砂壌土」が理想
• 粘土質は根腐れリスクが高い

● 水はけ(排水性)
畑の端に水が溜まっていないか、雨の後に見に行くのが一番確実。

● 水利
• 用水路が使えるか
• 水源はどうなっているか

果樹でも、苗木の定植時は水が必須です。

③農地が確保しやすい地域かどうか

新規就農の大きな壁は「農地が見つからない」ことです。

● 農業委員会の方針
地域によっては新規就農者に積極的だったり、逆に消極的だったりします。

● 農地中間管理機構(農地バンク)の活用状況
移譲・貸付が盛んなエリアは見つけやすい。

● 農家の高齢化が進んでいる地域ほど農地が空きやすい
若い層が少ない地域は貸してくれる可能性が高いです。
→ 農地が手に入る見込みがあるか は、地域選びで最重要です。

④生活環境(定住のしやすさ)

いくら農業が合っていても、生活環境が悪いと長続きしません。

● 生活に必要な施設の有無
• スーパー
• 病院
• ホームセンター
• ガソリンスタンド

農業は急な資材や部品の購入が多いので、距離が重要です。

● 移動手段(車が必須かどうか)
公共交通は使えない地域も多い。

● 家賃の相場
移住者向けの住宅支援がある地域もあります。

⑤コミュニティとの相性

農業は「地域社会」で動く仕事です。

● 研修先・農家との相性
その地域の人柄が自分に合うかどうかは非常に重要。

● 若手農家が多いか
「移住者ウェルカム」な地域は動きやすい。

● 集落のイベントや自治会の参加が必須か
地域によって参加の負担が大きく異なります。
→ 農地は“信用で貸す”文化なので、人間関係が非常に重要です。

⑥移住支援・就農支援制度の有無

地域によっては、次のような支援があります。
• 家賃補助
• 移住者向けの空き家バンク
• 就農支援金
• 技術研修制度
• 独自の補助金

支援が多い地域は、最初の負担が大きく減ります。

⑦最終的な判断は「体験してみること」

地域選びで最もおすすめなのは 短期滞在(お試し移住) です。
• 実際に気候を感じる
• 朝・昼・夜の集落の雰囲気を知る
• 農道・生活圏の距離感を知る
• その地域の農家と話して相性を確かめる

文章や写真ではわからない「相性」が見えてきます。

8. 就農までのスケジュール感(目安)

就農までの道のりは人によって異なりますが、共通しているのは 「情報収集 → 研修 → 資金計画 → 農地確保 → 独立」 の流れです。
特に果樹(ぶどう)の場合は準備期間が長くなる傾向があります。

ここでは、一般的なパターンを“目安としてのスケジュール”にまとめました。

①1年目:情報収集・地域探索・研修先探し

● 1〜3ヶ月:農業の方向性を決める
• 何を作りたいか
• どの地域でやりたいか
• どんな働き方が理想か(家族経営・個人・兼業など)

この時期は「理想を描く段階」でOK。

● 4〜6ヶ月:自治体・支援センターに相談
• 就農窓口(農政課)に相談
• 研修制度・補助金の概要を聞く
• 地域をいくつか候補に絞る

● 6〜12ヶ月:研修先の訪問・短期体験
• 気になる農家を訪問
• 1日〜1週間程度の短期研修
• 仕事の相性、人柄、生活環境をチェック
• 研修先を1つに決める

※ この時点で地域もほぼ決まることが多い

②2〜3年目:本格的な研修期間(技術習得)

● 農家での長期研修(1〜2年)
• 技術習得:剪定、誘引、管理、出荷
• 経営の基礎
• 地域の農家・JAとのつながりができる
• 農地候補が見え始める

この期間は「技術を盗む」「人脈を作る」ことが目的。
果樹の場合は2年研修する人が多いです。

● 同時進行でやるべきこと
• 資金計画づくり
• 補助金の相談
• 使いたい農地を早めにチェック
• 就農計画書づくり

独立後の動きがスムーズになります。

③3〜4年目:資金計画・農地確保・設備準備

● 研修後半〜研修終了時に動くこと
• 農地の正式な紹介・借りる手続き
• 補助金(経営開始型)の申請
• 設備投資(農機具・倉庫など)の見積もり
• 初期費用の確保(融資・自己資金)

● 必要に応じて住居の確保も
• 農地の近くに住まいを確保
• 空き家バンクなどを利用すると安く済むことも

このタイミングが一番忙しいですが、「いよいよ始まる」というワクワクも大きい時期。

④4年目:いよいよ就農・独立スタート

● 設備や農具を揃え、農地での準備開始
• 土壌改良
• 苗木の植え付け
• ぶどう棚の設置
• 防除管理スタート

果樹の場合、ここからすぐに収入が出ないため、
• 生活費の確保
• 補助金の活用
• 野菜の兼業栽培
などで収入を作る人も多いです。

⒐僕がぶどう農家として独立するまでの流れ

ここでは、僕が実際に歩んできた「ぶどう農家として独立するまで」のリアルな流れをまとめます。

①進学と専門知識の習得

高校卒業後は農業系の大学に進学し、果樹の専門的な知識を深めていきました。特にぶどうの栽培に興味を持ち、勉強も実習もぶどう中心の生活に。

②研修先での経験

大学卒業後は研修先の農家で本格的にぶどう栽培を学びました。現場での経験は机上の知識とは全く違い、土作り・剪定・誘引・収穫・販売まで、一連の流れを身をもって理解できる貴重な期間に。

③独立に向けた準備期間

研修をしながら、自分が将来どんな農家になりたいかを考え続けました。技術を学びつつ、農地探し・資金計画・設備準備なども並行して進め、着実にステップを踏んでいきました。

④独立し、ぶどう農家としてスタート

ついに独立を決意し、ぶどう農家としての生活がスタート。最初は不安も多かったものの、自分で決めた道を歩む喜びとやりがいを感じながら、栽培・販売・発信と日々の仕事に向き合っています。

ここまで読んでくださりありがとうございました。
新規就農ではやることが多く大変ですが、農業という仕事を志す仲間が増えるといいなと思いこの記事を書かせて頂きました。
この記事が、新規就農を目指す人の一歩を後押しできたら嬉しいです。

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